東京封鎖なら「L字回復」に転落か

– 小池百合子東京都知事が都市封鎖(ロックダウン)に言及後、東京都内の移動を厳しく制限する「首都封鎖」の現実味が高まっている。

しかし、政治・経済の機能が集中する首都圏で移動を規制した場合、生産や消費に直接的な打撃が発生するだけでなく、社会心理が不安定化し、マインド悪化から景気のV字回復ではなく、L字回復に陥るリスクも高まる。

「コロナショック」への対策として政府・与党は50兆円規模の支援策を検討しているが、その中には「首都封鎖」対策が今のところ入っていない。

封鎖中に売り上げがゼロになる中小・零細企業の「所得補償」というセーフティーネットを構築しないまま、強権を発動すると、日本経済に想定を超す大きな傷を生み出すことにもなりかねない。

五輪延期超えるGDP0.4%押し下げ

野村総合研究所・エグゼクティブエコノミスト(元日銀審議委員)の木内登英氏は、移動制限による打撃は消費面で顕在化し、東京都だけを対象に1カ月間ロックダウンが実施されると、日本の国内総生産(GDP)を0.44%押し下げると試算した。

これは2020年東京五輪の延期で生じるGDP押し下げよりも、マイナス幅が「深く」なるという。

東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で日本全体のGDPの30%を稼ぎ出している。仮に緊急事態宣言の期間が、一部で報道されているように3週間とし、この間に生産の多くがストップするなら、それだけでGDPを1%強押し下げることになる。

このマイナス効果は、すでに発生している「新型コロナショック」によって生じ、これから起きると想定している輸出減少や観光・インバウンド関連、消費関連の売上減少とは、別に発生することに注目してほしい。

安倍晋三首相も27日の参院予算委で「仮にロックダウン・都市の封鎖のような事態を招けば、わが国の経済にも、さらに甚大な影響を及ぼす」と述べた。

4─6月期に2ケタのマイナス成長も

日本のGDPは2019年10─12月期の段階で前期比年率マイナス7.1%に落ち込んだ。

当初、政策当局やエコノミストは2020年1─3月に回復するとみていた。だが、中国における爆発的なコロナ感染により、輸出とインバウンドの両方がマイナスになるため、「小幅マイナスやむなし」に傾いた。

その後、感染の中心が欧米に移り、強力な移動規制が発令されることになって、今では、前期比同マイナス4─5%に落ち込むとの予想が増えている。中には、2桁のマイナスになるとの声も出ている。

そこに「首都封鎖」が加われば、どこまで日本経済が沈み込むのか、底が見えない状況と言える。

期間延長ならGWにキャンセルラッシュ

問題なのは、仮に政府の緊急事態宣言が首都圏を対象に出て、期間が3週間と限定されても、期間中に感染者が増大し続ければ、期間延長となる公算が大きい点だ。感染症の専門家の間では、東京都内の感染者の実態は、発表されている200人台の数倍から10倍程度との見方がある。

感染者の増加が継続中は、封鎖を続けるとなると、国民に与える心理的・経済的「負荷」は、相当に大きくなるだろう。

例えば、4月上旬に宣言が出て、4月下旬を迎え、さらに数週間延長するとなると、首都圏在住者は大型連休中のレジャー関連の予約キャンセルを強いられることになる。

その場合、マイナスの影響は全国に飛び火し、観光業を中心に関連する業種の中には、事業継続に「赤信号」が点灯するところが続出すると予想される。

セーフティーネットなしの恐怖

ところが、封鎖によって生じる売上減少を補てんするセーフティーネットが構築されていない。

中小・零細の店舗に「自粛」を要請し、売り上げゼロが続いた場合、持ちこたえる期間には限度があるだろう。

政府・与党は「無利子融資」の有効性を強調するが、キャッシュを注入しなければ、店舗閉鎖に追い込まれる経営者が続出し、そこで雇用されている従業員も路頭に迷いかねない。

政府・与党は、緊急事態宣言を出す前に、セーフティーネットを必ず構築し、失業者を出さない方針を明確にするべきだ。そうでないと、現在、検討されている商品券を配っても、効果が発揮されないことになる。

さらに問題なのは、社会心理の悪化だ。

東京都の今週末における外出自粛要請が出た25日夜、スーパーに長蛇の列が発生し、食料品の買いだめが起きた。

その大きな理由は、政府が6億枚の生産を強調しても事態が好転しない「マスク不足」の経験があるからだ。「首都封鎖」後に、大規模な食料品不足が発生するような事態になれば、各所でトラブルが発生しかねない。

いったん、社会的な心理が悪化に傾くと、多くの国民は消費性向を下げるに違いない。所得から消費ではなく、所得から貯蓄への悪循環である。こうなると、Ⅴ字回復が絵に描いた餅となり、L字回復が現実となる。

先行する中国で上がらない稼働率

一方で、移動規制を緩めている中国では、なかなか稼働率が戻っていない。70%弱との見方もあり、感染増がピークアウトしても、元に戻すまでにかなりの時間がかかりそうだという。先行している中国の例は、日本にとっても貴重な材料になるのではないか。

一部には、中国が先行して世界景気をリードするとの見方もあるが、最大市場の米国が感染の中心地になりつつあり、中国は大きな輸出先を失っている。内需だけの片肺飛行では、低空での推移を余儀なくされると予想する。

日本も同様である。外需が直ちに上向かない中、打撃を受けた中小・零細経営者は貯えを大きく減らし、直ちに積極的な経済活動に移れないだろう。

内需の立ち直りには相当の時間がかかると指摘したい。

L字回復でも相当の低成長を覚悟しなければならないが、途上国でのコロナ感染拡大による「第2波」が先進国を襲ってきた場合、一段の株価下落もあり得る。経験したことのない乱気流にはまり込んだ可能性が高い。

〔マーケットアイ〕外為:正午のドルは107円前半、リスク回避の円買い広がる

[東京 30日 ロイター] –

<12:00> 正午のドルは107円前半、リスク回避の円買い広がる

正午のドル/円は、ニューヨーク市場27日午後5時時点(107.89/92円)に比べ、ドル安/円高の107.30/32円。

米国で新型コロナウイルスの感染者がうなぎのぼりに上昇して14万人超となるなか、この日はリスク回避のセンチメントの高まりを映して、円が全面高となった。

ドル/円は一時107.14円まで下落して12日ぶり安値をつけ、ユーロ/円は高値から1円幅で急落し118.90円となった。

「米国での感染者拡大を背景に、日米の株価が下落していること、米長期金利が低下していることでリスク回避の円買いが広がった。とりあえず107円割れは免れたが、夕刻にかけて(ドルの)一段安のリスクもある」(外為アナリスト)という。

月末・期末の五・十日に当るこの日は仲値公示までは輸入企業のドル買いが先行したが、仲値通過後は輸出の売りや本邦企業による海外収益の自国送金に伴うドル売り/円買いが勝った。

ユーロ/ドルは1.1144ドルから1.1085ドル付近まで下落し、前営業日の上げ幅の約3分の1を返上した。

「トランプ米大統領のコロナ対策の迷走ぶりもドルにとってマイナス材料」(金融機関)という。

トランプ大統領は29日、新型コロナウイルス感染拡大を防止するために導入した国民向けの行動指針の適用期限を従来目標の4月12日から同月30日に延長すると表明した。トランプ氏は先週、復活祭(イースター)の日曜日に当たる4月12日までに米経済活動を再開させたい意向を表明し、感染者急増への対応に苦慮する州知事らから反発を招いていた。 トランプ氏は今回の方針転換について、31日に詳細を明らかにするとした。

ロイターの算出によると、米国では新型コロナの死者は2460人を突破した。感染者は14万1000人超で、世界最多となっている。

<10:45> ドル107.30円に下落、株安嫌気し12日ぶり安値

ドルは一時107.30円に下落し、12日ぶりの安値を付けた。

株安を嫌気したリスク回避の円買いに加え、月末・期末を控えた実需の売買が交錯する中で、この日はドル売りが優勢となっているため。

シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は30日、市場の予想通り、金融政策を緩和した。新型コロナウイルスの世界的大流行で同国経済は大幅なリセッション(景気後退)に陥ると予想されている。 MASは、シンガポールドルの名目実効為替レート(NEER)の許容変動幅について、同変動幅の中間点をやや下回る現行水準を起点に、年間の上昇率をゼロ%とする政策を採用するとした。

シンガポールドルは1ドル=1.4269シンガポールドル付近。MASの緩和決定を受けて、一時1.4209シンガポールドルまで強含んだ。

シンガポールドルは23日に一時1.4646ドルまで下落し、2009年5月以来の安値を付けたが、現在は反発傾向にある。