ドルはどこに向かうのか、鍵は米中貿易戦争の行方

[出典:ニューヨーク 7日 ロイター]

トランプ米大統領はドル相場の下落を望んでいる。
国際通貨基金(IMF)は、ドルは過大評価されているとの見方を示している。
ヘッジファンドはドルには上昇余地があると考えている。

誰が正しいのだろうか。

米中貿易戦争が昨年3月に勃発して以降、ドルは通貨バスケットに対して3%超上昇した。

ただ、ドル高はトランプ大統領のお気に召さない。

大統領は、米国の輸出競争力を高めるため、ドル安を望んでいるからだ。実際、米政府は5日、中国が10年超ぶりの元安水準を容認したことを受けて、中国を為替操作国に認定した。

トランプ大統領は、中国など米国の貿易相手国が、貿易面で優位に立とうとして自国通貨を安値に誘導しようとしていると考えている。

こうした大統領の姿勢を背景に、米政府が為替安定化基金(ESF)を使ってドルの押し下げに向けた介入を行うのではないかとの見方も浮上している。

ただし、これは現実的ではないようだ。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、同基金が持つ資金は1460億ドル程度であり、5兆ドル以上の規模である外為市場に影響を与えるには十分ではないとみられる。

ドルが下落すべきと考えているのは、トランプ大統領だけではない。

IMFは先月公表した年次の「対外部門の安定性に関する報告書」の中で、ドルは短期のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づくと6─12%過大評価されているとの見解を示した。

ただ、ドルが世界の準備通貨になっていることなどの構造的な要因により、ドルがファンダメンタルズに沿って下落する可能性は低いとした。

一方で、世界が貿易戦争を起因とする成長停滞に向かう中、ヘッジファンドはドルの一段高を見込んだ取引を積極化させている。

<強気派の主張>

ドル高を見込んだ取引は実際、人気がある。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの7月のファンドマネジャー調査によると、回答者の49%がドルは過大評価されていると考えている。投機筋は昨年6月中旬以降、ドルを買い越している。

強気派は、ドルは貿易戦争激化の恩恵を受ける可能性があるとみている。

TDセキュリティーズのシニア外為ストラテジスト、マゼン・イサ氏は「ドルは安全な逃避先」であり、中国との貿易戦争がさらにエスカレートした場合、ドルに代わる選択肢は極めて限られていると述べた。

またアナリストは、外国人投資家はヘッジ手段として米国債を買う傾向にあると指摘する。

ドルと米国債の魅力を一段と高めているのは、他資産とのイールドプレミアムだ。

プリンシパル・グローバル・インベスターのチーフストラテジスト、シーマ・シャー氏は、非米国債券の40%以上がマイナス金利となる中、米国債は相対的に高利回りであると話す。

<弱気派の言い分>

貿易戦争が相対的に安全性が高いドルに恩恵となってきたことは確かだが、貿易戦争は米経済への打撃となるため、ドルに下押し圧力がかかるとの議論もある。

ウエストパックの外為戦略責任者、リチャード・フラヌロビッチ氏は「貿易戦争の激化は米経済のリスクであり、米連邦準備理事会(FRB)が一段と政策を緩和する要因になると考えている」と話す。

FRBは先週、10年ぶりの利下げに踏み切った。

CMEグループの「フェド・ウオッチ」によると、6日の金利先物は、FRBが来月追加利下げすることを完全に織り込んだ。

CIBCの外為戦略責任者、ビパン・ライ氏は「米中貿易戦争が激化すればするほど、ドルにとってはより弱材料になる。これは、貿易戦争の初期のころには分からなかったことだ」と指摘した。

ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジーウェイ・レン氏は、米経済が世界の他地域よりも好調だとは言っても、現時点ではドルの強気シナリオは見込みにくいと話す。

「ドルはこの2─3年、高水準での推移が続いた。ある一国があまりに長く強くあり続けることは、極めて難しいのではないか」とみている。

[東京 7日 ロイター]

– 午後3時のドル/円は、前日ニューヨーク市場の午後5時時点から円高の106円前半。

一時105.93円まで売られるなど、前日に進んだ円安は一服となった。NZドルの急落が円を押し上げた面もあった。

この日の中国人民元の基準値はほぼ市場予想通り。

しかし、取引開始後に元がじりじりと下げ幅を広げると、米中対立への懸念が再び膨らむ形で、円が堅調さを取り戻した。

目立ったのはNZドルの下げ。

中銀が予想を上回る0.5%の利下げに踏み切ったことで、NZドルは69円半ばから67円後半まで大きく下落。2012年12月以来6年8カ月ぶり安値を更新した。